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記事: ハーマンミラーとは?|思想と歴史

ハーマンミラーとは?

ハーマンミラーとは?|思想と歴史

働く環境を変えてきたデザイン思想

ハーマンミラーの思想と歴史


ハーマンミラーは、アメリカ・ミシガン州ジーランドを拠点とする家具ブランドです。アーロンチェアなどのワークチェアと、イームズ、ジョージ・ネルソン、イサム・ノグチらによる名作家具を、「家具は人の身体・暮らし・働き方を支える道具である」という考え方のもとで手がけてきました。

ハーマンミラーを理解するうえでは、名作家具の歴史だけでなく、De Pree家の経営、アクション・オフィスによるワークプレイス研究、人間工学にもとづくアーロンチェア、そして長く使うための保証・修理までを、一つながりで見ることが大切です。

この記事では、ハーマンミラーがどのように近代家具メーカーへ変化し、なぜ現在も住宅とオフィスの両方で選ばれ続けているのかを解説します。

ハーマンミラーとは

ハーマンミラーは、住宅家具からオフィスチェアまでを、人の身体・暮らし・働き方を支える道具として設計してきた家具ブランドです。

現在は、アーロンチェア、エンボディチェア、セイルチェア、コズムチェアなどのワークチェアに加え、イームズ、ジョージ・ネルソン、イサム・ノグチらによる家具や照明を展開しています。

住宅向けの名作家具と、オフィス向けのワークチェアは、一見すると別の製品群に見えるかもしれません。

しかし両者には、共通する出発点があります。家具を単なる装飾品ではなく、座る、休む、働く、集まるといった人の行動を支える道具として考えることです。

ハーマンミラーは、デザインの美しさと実用性を切り離さず、時代ごとの生活や仕事の変化に合わせて、家具と空間のあり方を考えてきました。

De Pree家がつくった会社の骨格

ハーマンミラーの人を中心に置く企業文化は、De Pree家の経営によって形づくられました。

ハーマンミラーの歩みを理解するうえでは、D.J. De Pree、Hugh De Pree、Max De Preeの存在が欠かせません。三者は異なる時代に会社を率いながら、デザイン、組織、働く環境を切り離さずに考える企業文化を育ててきました。

D.J. De Pree|会社の進路を変えた経営者

1923年、D.J. De Preeは義父Herman Millerに前身企業Michigan Star Furniture Companyの株式の過半数を取得してもらい、社名をHerman Miller Furniture Companyへ変更しました。D.J. De Preeは同社の初代社長となりました。

当時の同社は、地域家具メーカーの一つでした。しかし経営環境が厳しくなるなかで、価格競争ではなく、デザインと品質によって会社の価値をつくる道を選びます。

この判断が、後のギルバート・ローデ、ジョージ・ネルソン、チャールズ&レイ・イームズらとの協業につながりました。

Hugh De Pree|成長と企業文化を支えた二代目

D.J. De Preeの長男であるHugh De Preeは、成長期のハーマンミラーを支え、組織づくりの基盤を整えた人物です。

家具づくりは、デザイナーだけで完結しません。設計、試作、部材調達、製造、物流、販売、修理まで、多くの人の技術と判断が積み重なって初めて製品になります。

Hugh De Preeの時代に育まれた、人や現場を尊重する姿勢は、後にハーマンミラーが家具単体ではなく、働く環境そのものを考える会社へ進む土台になったと考えられます。

Max De Pree|人間らしい組織を言語化した三代目

Max De Preeは、後にCEOとしてハーマンミラーを率い、著書『Leadership Is an Art』でも知られる人物です。

彼は、リーダーシップを単なる管理技術ではなく、人の可能性を引き出す営みとして捉えました。

この考え方は、ハーマンミラーの製品開発にも重なります。アーロンチェアが体格や姿勢の違いに対応しようとしたこと。アクション・オフィスが、全員に同じ机と同じ働き方を与えるのではなく、人の行動に合わせて環境を変えようとしたこと。いずれも、一人ひとりの違いを前提に考える姿勢の表れといえます。

[De Pree家とハーマンミラーの未来像について詳しくはこちら]

ジョージ・ネルソンが導いた、近代家具メーカーへの転換

ジョージ・ネルソンは、ハーマンミラーを伝統家具メーカーから近代家具メーカーへ進ませた中心人物の一人です。

ネルソンは、家具デザイナーであると同時に、建築家、編集者、思想家でもありました。彼は家具単体の形を考えるだけでなく、「現代の暮らしに必要な空間とは何か」という問いを持っていました。

収納、照明、ベンチ、ソファ、オフィス家具。ネルソンの仕事には、生活の変化に合わせて家具の役割を組み替えようとする姿勢があります。

ネルソンがデザインディレクターを務めた時代、ハーマンミラーではチャールズ&レイ・イームズ、イサム・ノグチ、アレキサンダー・ジラードらとの協業が広がっていきました。

ハーマンミラーは、一人のデザイナーの作風に統一されたブランドではありません。異なる才能が、それぞれの方法で、人の生活をより良くする家具を追求してきたブランドです。

イームズ、ネルソン、ノグチ。名作家具に共通するもの

ハーマンミラーの名作家具は、造形の美しさだけで現在まで評価されているわけではありません。

チャールズ&レイ・イームズは、身体を受け止める椅子を、より多くの人が使える製品として成立させるために、成形合板、ファイバーグラス、金属などの素材と製造技術を研究しました。

イームズシェルチェアは、住宅のダイニング、カフェ、学校、オフィスなど、多様な場所で使われてきました。特定の空間だけのために作られた椅子ではなく、時代や用途に応じて使われ方を変えられることが、長く残る理由の一つです。

イームズラウンジチェア&オットマンも、単なる高級チェアではありません。成形合板のシェル、クッション、オットマン、回転機構を組み合わせ、身体を預けて休息するための姿勢を設計した製品です。

ネルソンのプラットフォームベンチやバブルランプ、ノグチテーブルも同様です。家具を先に装飾として考えるのではなく、素材、構造、空間との関係を考えた結果として、独自の形が生まれています。

アクション・オフィスが変えた、働く場所の考え方

アクション・オフィスは、固定席ではなく、人の行動に合わせて働く場所を組み替えるためのオフィスシステムとして構想されました。

ハーマンミラーは住宅家具だけでなく、「人はオフィスでどのように働くのか」という問いにも早くから向き合ってきました。

その象徴が、ロバート・プロプストが率いたハーマンミラー・リサーチ・コーポレーションの構想をもとに開発されたアクション・オフィスです。

1964年にAction Office Iが発表され、1968年にはモジュール式パネルを中心としたAction Office IIへ発展しました。

当時のオフィスは、管理職の個室と、大きな空間に机を並べる事務室に大きく分かれていました。アクション・オフィスは、その二つだけではない働く場所をつくろうとしたシステムです。

パネル、作業面、収納、照明などを組み合わせ、仕事の内容や人数の変化に応じて空間を組み替える。固定された机や部屋を与えるのではなく、人の行動に合わせて環境を変えられるようにすることが、アクション・オフィスの基本的な考え方でした。

その背景には、空間と人間行動に関する研究がありました。人は距離、視線、音、周囲の動きによって、集中しやすさや安心感が変わります。アクション・オフィスは、パネルで人を区切るためだけの製品ではなく、個人の作業領域と他者との関係を調整する環境設計でもありました。

後に、この考え方は「キュービクル」と呼ばれるオフィス形式の広がりにもつながります。ただし本来のアクション・オフィスは、狭い区画へ人を押し込めるための構想ではありません。

個人の集中、チームでの協働、組織の変化に応じて、働く場所を柔軟に組み直すための仕組みでした。

現在のハイブリッドワークやフリーアドレスは、アクション・オフィスの単純な再来ではありません。しかし、集中、会議、共同作業、オンラインでのやり取りに応じて環境を切り替えるという発想には、通じる部分があります。

[アクション・オフィスについて詳しくはこちら]

アーロンチェアは、なぜオフィスチェアの基準を変えたのか

アーロンチェアは、体格や姿勢の違いに対応しながら、長時間の作業中に動き続ける身体を支えるためのワークチェアです。

アーロンチェアは1994年に登場しました。デザインを担当したのは、ビル・スタンフとドン・チャドウィックです。

従来の高級オフィスチェアには、厚いウレタンフォームや張地を使った製品が多く見られました。アーロンチェアはこの前提を変え、ペリクルと呼ばれるサスペンション素材を座面と背に採用しました。

身体を一点で支えるのではなく、面で受け止める。熱や湿気がこもりにくい。座る人の身体や動きに合わせて、椅子側も働く。

アーロンチェアは、単に高機能な椅子ではありません。体格、姿勢、作業内容、デスク環境に合わせて性能を引き出すためのワークチェアです。

そのため、見た目や座面の柔らかさだけで選ぶより、サイズ、可動域、ポスチャーフィットSL、前傾チルト、キャスターなどを、実際の使用環境に合わせて確認することが大切です。

THE CHAIR SHOPでは、アーロンチェアの試座で「最初に座って気持ちよいか」だけではなく、実際に使う姿勢へ近づけて確認します。デスクに手を置いた状態で足裏が安定するか、座面の奥行きが膝裏を圧迫しないか、腰部サポートが身体に対して強すぎないか。こうした点は、短時間では見落としやすいものの、長時間使用では差になりやすい部分です。

また、サイズは身長だけで決まるわけではありません。脚の長さ、体格、デスクの高さ、前傾姿勢を使うかどうかによっても、合う仕様は変わります。

[アーロンチェアを試座する際に確認したいポイントはこちら]

[アーロンチェアのサイズ選びはこちら]

[アーロンチェアのキャスター選びはこちら]

「くつろぐ身体」と「動き続ける身体」

イームズラウンジチェアは休息時の身体を、アーロンチェアは作業中に動き続ける身体を支える椅子です。

イームズラウンジチェアは、成形合板のシェル、厚みのあるクッション、オットマンによって、身体をゆったりと預けるための姿勢をつくります。

一方でアーロンチェアは、仕事中に姿勢を変え、前後へ動き、長時間集中する身体を支えるための椅子です。リクライニング、前傾、腰部サポート、メッシュによる荷重分散などは、座ったまま動くことを前提としています。

両者は「座るための椅子」ではあっても、想定している座り方は同じではありません。

イームズラウンジチェアは、休息のための身体を支えます。アーロンチェアは、仕事の中で動き続ける身体を支えます。

この違いは、ハーマンミラーが時代に応じて、人間工学の対象を変えてきたことも示しています。住宅でくつろぐ時間と、情報機器の前で長時間働く時間では、身体に必要な支え方が異なるためです。

長く使うことの意味|保証、修理、素材、総保有コスト

ハーマンミラーのワークチェアは、短期間で使い切る消耗品ではなく、長期間使うことを前提に選ばれる家具です。

再生材や環境配慮素材の採用も重要ですが、家具の環境負荷を考える際には、良い製品を短期間で買い替えず、必要に応じて修理しながら使い続けられることにも意味があります。

長期保証は、故障時の安心感だけを示すものではありません。長期使用を前提として、設計、部品供給、修理、アフターサポートを考えるための仕組みの一部と捉えることができます。

中古市場でもアーロンチェアは多く流通しています。ただし中古品は、外観がきれいであれば安心とは限りません。

THE CHAIR SHOPでは、中古アーロンチェアを見る際、見た目だけでは判断しません。製造時期、仕様、昇降・リクライニング・前傾チルト・アーム調整の状態、メッシュの張り、異音や動作の引っかかり、部品交換の履歴などを確認します。

同じように見えるアーロンチェアでも、世代や仕様によって、腰部サポート、アーム、チルト機構、キャスターなどが異なる場合があります。シリアルラベルは製造時期を確認するための手がかりになりますが、ラベルだけで製品状態のすべてが分かるわけではありません。

中古品を選ぶ際には、製造時期と仕様を確認したうえで、実際に各機構が正常に動作するかを確かめることが重要です。

ハーマンミラー製品は、状態によっては部品交換や調整によって使用を続けられる場合があります。購入後の修理やメンテナンスを考える際には、保証の有無だけでなく、相談先や部品対応の見通しも確認しておくと安心です。

「値上がりする投資」として考えるより、適切に選び、必要に応じてメンテナンスしながら長く使うことで、総保有コストを考えやすい家具と捉える方が実態には近いかもしれません。

[ハーマンミラー正規品と中古品の違いはこちら]

[アーロンチェアのシリアル番号と製造時期の確認方法はこちら]

[ハーマンミラー製品のお手入れとメンテナンスはこちら]

住まいと仕事場の境界が変わる現在

ハーマンミラーは、住宅とオフィスの境界をまたぐ家具を長く提案してきたブランドです。

以前は、住宅家具とオフィス家具を別々に考えることが一般的でした。

しかし現在は、自宅での仕事、オンライン会議、短時間の集中作業、読書、創作、家族と共有する時間など、一つの住空間の中で複数の行動を切り替える場面が増えています。

自宅にアーロンチェアを置くことは、住まいをそのままオフィスに変えることではありません。長時間作業に必要な身体的な支えを、生活空間の中へ取り入れることでもあります。

同時に、イームズやネルソンの家具が住宅だけでなく、オフィスや商業空間でも使われ続けてきたことは、ハーマンミラーの家具が「住む」と「働く」の境界を以前からまたいできたことを示しています。

ハイブリッドワークの時代に必要なのは、住宅をオフィス化することではなく、休息、集中、会話、創作といった異なる行動に合わせて、空間と家具を選べることかもしれません。

よくある質問

ハーマンミラーはどこの国のブランドですか?

ハーマンミラーは、アメリカ・ミシガン州ジーランドを拠点とする家具ブランドです。

正規販売店で購入する意味はありますか?

正規販売店では、体格、デスク高、床材、作業姿勢、使用時間に合う仕様を確認しながら選べます。

購入後も、保証、修理、部品、メンテナンスについて相談できる窓口を持てることが、長く使ううえでの利点です。

THE CHAIR SHOPのハーマンミラー取り扱いについて

THE CHAIR SHOPは、ハーマンミラー正規販売店です。

川崎ショールームでは、アーロンチェアをはじめとするワークチェアについて、サイズ、カラー、調整機能、座り心地をご確認いただけます。

THE CHAIR SHOPでは、アーロンチェアを「座り心地がよいか」だけでなく、デスクの高さ、床材、使用時間、前傾姿勢の有無まで含めてご案内しています。

ハーマンミラーの家具は、デザイン史に残る製品である一方、日々の暮らしや仕事の中で使われる道具でもあります。

名作として眺めるだけでなく、自分の身体や空間に合う形で長く使い続けること。そのための選択をお手伝いすることが、正規販売店の役割の一つだと考えています。

まとめ

ハーマンミラーは、イームズ、ネルソン、ノグチによる名作家具を生み出してきたブランドです。

同時に、アクション・オフィスを通じて働く場所のあり方を考え、アーロンチェアを通じて座る人の身体と姿勢に向き合ってきたメーカーでもあります。

De Pree家による経営思想、デザイナーたちの創造性、研究開発による環境設計。これらが重なり、ハーマンミラーは家具を単体で売る会社ではなく、暮らし方と働き方を考える会社として発展してきました。

ハーマンミラーの家具を選ぶ際には、デザインの背景を知ることと同時に、実際の使用環境に合う仕様を確認することが大切です。とくにワークチェアは、サイズ、調整機能、床材との相性まで含めて選ぶことで、長期的な使いやすさが変わります。

片上太朗 監修:片上 太朗(ハーマンミラー認定スペシャリスト)

ハーマンミラー製品の販売・提案・製品保守業務を20年以上担当。 ハーマンミラー認定エルゴノミックアドバイザーとして商品情報・サイズ選定ガイド・調整方法の監修を行っています。

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