記事: アーロンチェア リマスタードとは?

アーロンチェア リマスタードとは?
リマスタードとは?
アーロンチェア リマスタードは、1994年に登場したアーロンチェアを、現代の働き方や人間工学、素材・製造技術の進歩に合わせて再設計したモデルです。
ハーマンミラーは2016年、初代アーロンチェアをビル・スタンフと共同でデザインしたドン・チャドウィックの協力を得て、アーロンチェアを全面的に見直しました。
外観には1994年のアーロンチェアらしさを残しながら、ペリクル、チルト機構、背中のサポート機構などが更新されています。
現在、1994年に登場したモデルを「アーロンチェア クラシック」、2016年に再設計されたモデルを「アーロンチェア リマスタード」と呼び分けることがあります。
なぜアーロンチェアはリマスタードされたのか
初代アーロンチェアが発売されたのは1994年です。
それから20年以上の間に、パソコンを使った仕事の比重は増え、働く場所や姿勢も変化しました。同時に、人間工学に関する研究、素材、製造技術も進歩しています。
ハーマンミラーは、初代アーロンチェアの基本的な考え方を残しながら、こうした変化を反映するために設計を見直しました。
つまりリマスタードは、アーロンチェアをまったく別の椅子へ作り変えたものではありません。
初代アーロンチェアが目指したものを、約20年後の技術でもう一度つくり直したモデル
と考えると、その位置づけがわかりやすくなります。
リマスタードで変わった主なポイント
その1. ペリクルから8Zペリクルへ(リニューアル度:5/5 ★★★★★)
アーロンチェアを特徴づける素材の一つが、座面と背もたれに使われているサスペンション素材「ペリクル」です。
リマスタードでは、このペリクルが「8Zペリクル」へ更新されました。
8Zの「8」は、座面4か所、背もたれ4か所の合計8つのゾーンを意味します。
それぞれのゾーンで張力を変えることで、身体の部位に応じて支え方を変える構造になっています。
単にメッシュ素材を張った座面ではなく、サスペンションそのものを身体を支える構造として利用していることが、アーロンチェアの特徴です。
その2. Harmonic 2チルト(リニューアル度:5/5 ★★★★★)
リクライニング機構もリマスタードで大きく見直された部分です。
現在のアーロンチェアには「Harmonic 2チルト」と呼ばれるチルト機構が採用されています。
座る人の身体の動きに合わせて、前傾姿勢から通常の着座姿勢、リクライニング姿勢まで滑らかに移動できるよう設計されています。
アーロンチェアは、特定の姿勢へ身体を固定する椅子ではありません。
仕事中に姿勢を変える身体に対して、椅子側も動くという考え方は、クラシックからリマスタードへ引き継がれています。
その3. PostureFit SL(リニューアル度:4/5 ★★★★)
背中のサポート機構も見直されました。
リマスタードで採用されたPostureFit SLは、仙骨部と腰部をそれぞれ支える2つのパッドによって構成されています。
下側のパッドが仙骨部を支え、上側のパッドが腰部を補助します。
腰だけを一点で押すのではなく、骨盤周辺から腰部にかけて支えることを目的とした機構です。
その4. アームパッドの前後調整(リニューアル度:3/5 ★★★)
アームレストの調整範囲も、リマスタードで拡張されました。
クラシックでは、仕様によってアームの高さ調整と、アームパッドを左右に振る角度調整が可能でした。
リマスタードでは、フルアジャスタブルアームを選択すると、これらに加えてアームパッドを前後にスライドできるようになりました。
キーボード作業ではアームを前方へ、デスクへ身体を近づけたい場合には後方へ移動するなど、作業姿勢に合わせて肘を支える位置を調整しやすくなっています。
※リニューアル度は、クラシックからの設計変更の大きさをTHE CHAIR SHOPが5段階で独自評価したものです。
変わらなかったものもある
リマスタードでは多くの機構が変更されましたが、アーロンチェアの基本的な構成は継承されています。
A・B・Cの3サイズ展開、クッションではなくサスペンション素材で身体を支える考え方、身体の動きに追従するチルト機構などは、初代アーロンチェアから続く特徴です。
外観についても、一目でアーロンチェアとわかる基本的なシルエットは維持されています。
そのため、クラシックとリマスタードを並べるとよく似ていますが、実際には内部の機構や身体の支え方には多くの違いがあります。
クラシックとリマスタードの主な違い
| 項目 | クラシック | リマスタード |
|---|---|---|
| 登場 | 1994年 | 2016年 |
| デザイン | ビル・スタンフ ドン・チャドウィック |
ドン・チャドウィックが再設計に参加 |
| サスペンション | ペリクル | 8Zペリクル |
| 背中のサポート | ランバーサポート/PostureFitなど | PostureFit SLなど |
| チルト | Kinemat Tilt | Harmonic 2チルト |
| サイズ | A・B・C | A・B・C |
リマスタードはクラシックの後継モデル
「リマスタード」という名称から、限定モデルや特別仕様と思われることがありますが、リマスタードはアーロンチェアの後継世代です。
現在新品として販売されているアーロンチェアを、旧型のクラシックと区別する際に「リマスタード」と呼びます。
一方、中古市場では現在もクラシックとリマスタードの両方が流通しています。
外観が似ていても、ペリクル、チルト、腰部サポート、操作部などに違いがあるため、中古品を検討する場合には世代を確認することが重要です。
[アーロンチェア クラシックについて詳しくはこちら]
クラシックは古いから劣っている?
クラシックは旧型ですが、単純に「古いから悪い」というものではありません。
1994年に登場したクラシックが長期間販売され、多くのオフィスや家庭で使われてきたからこそ、その設計思想を引き継いだリマスタードが存在します。
一方で、現在新品のアーロンチェアを選ぶ場合には、8Zペリクル、PostureFit SL、Harmonic 2チルトなど、リマスタードで加えられた改良を利用できます。
クラシックとリマスタードは、まったく別の椅子というより、同じアーロンチェアの異なる世代として捉える方がわかりやすいでしょう。
アーロンチェアは「デザインを変えずに中身を変えた」
アーロンチェア リマスタードで興味深いのは、外観を大きく変えなかったことです。
1994年に確立されたアーロンチェアの姿を残しながら、身体を支える素材やチルト機構、背中のサポートなどを更新しています。
新しい製品として別の名称を与えるのではなく、同じ「Aeron Chair」として設計を更新したことに、リマスタードという名称の意味があります。
まとめ
アーロンチェア リマスタードは、1994年に登場したアーロンチェアを、約20年後の人間工学研究、素材、製造技術をもとに再設計したモデルです。
2016年、初代アーロンチェアの共同デザイナーであるドン・チャドウィックの協力によって発表されました。
8Zペリクル、Harmonic 2チルト、PostureFit SLなどが採用される一方、A・B・Cの3サイズ展開や、身体の動きに椅子が追従するという基本的な考え方はクラシックから受け継がれています。
アーロンチェア リマスタードは、新しいアーロンチェアというより、アーロンチェアを現代の技術でもう一度つくり直したモデルです。

監修:片上 太朗(ハーマンミラー認定スペシャリスト)

