記事: アーロンチェアとは? | 機能と歴史

アーロンチェアとは? | 機能と歴史
アーロンチェア(Aeron Chair)は、アメリカの家具メーカー「ハーマンミラー」が1994年に発売した、エルゴノミクス(人間工学)に基づいて設計された高機能オフィスチェアです。 一般的なクッション素材ではなく、伸縮性のあるサスペンション素材「ペリクル」を座面と背もたれに採用したことが大きな特徴です。デザインはビル・スタンフとドン・チャドウィックが手がけました。
1994年の発売以降、アーロンチェアはオフィスチェアを代表する製品のひとつとなりました。 2016年には、共同デザイナーであるドン・チャドウィックの協力により設計が全面的に見直され、現在の「アーロンチェア リマスタード」が発表されています。
アーロンチェアの歴史

1994年 アーロンチェア発売
アーロンチェアは1994年に発売されました。 デザイナーはビル・スタンフとドン・チャドウィックです。
当時の一般的なオフィスチェアで使われていたフォームクッションや布張りとは異なり、座面と背もたれに「ペリクル」と呼ばれる伸縮性のあるサスペンション素材を採用しました。 ハーマンミラーは、この構造を人間工学と素材技術の両面におけるアーロンチェアの特徴として位置づけています。
1996年 グッドデザイン賞を受賞
アーロンチェアは1996年、日本のグッドデザイン賞において金賞を受賞しました。 その後、2011年にはグッドデザイン・ロングライフデザイン賞も受賞しています。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)に収蔵
アーロンチェアはニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションにも収蔵されています。 オフィスチェアとしての機能だけでなく、20世紀を代表する工業デザインのひとつとしても知られています。
2016年 アーロンチェア リマスタードを発表
2016年、ハーマンミラーはアーロンチェアを全面的に再設計した「アーロンチェア リマスタード」を発表しました。 再設計には、初代アーロンチェアの共同デザイナーであるドン・チャドウィックが参加しています。
外観の基本的なデザインを継承しながら、チルト機構、サスペンション素材、背中のサポート機構などが見直されました。 現在販売されているアーロンチェアは、このリマスタードモデルを基本としています。
アーロンチェアの主な機能

1. 8Zペリクル
現在のアーロンチェアは、座面と背もたれに「8Zペリクル」と呼ばれるサスペンション素材を採用しています。
8Zペリクルは、座面と背もたれをそれぞれ複数の張力ゾーンに分け、合計8つのゾーンで身体を支える構造です。 身体の部位に応じてサポートの強さを変えることで、座る人の体重を分散させるよう設計されています。
2. PostureFit SL
PostureFit SLは、背もたれ側から仙骨部と腰部を支えるサポート機構です。 上下に配置された2つのパッドによって、骨盤周辺と腰部をサポートします。
アーロンチェアでは、この部分のサポート量を調整できる仕様があります。
3. Harmonic 2チルト
Harmonic 2チルトは、現在のアーロンチェアに採用されているリクライニング機構です。 座る人の動きに合わせて、前傾姿勢からリクライニング姿勢まで連続的に動くよう設計されています。
リクライニングの硬さを調整できるほか、仕様によってはリクライニング範囲や前傾チルトを設定できます。
4. 前傾チルト
アーロンチェアには、通常の着座位置より座面と背もたれを前方へ傾ける「前傾チルト」があります。 前方に身体を寄せて作業する際にも、背もたれと座面が身体の動きに追従するための機能です。
5. アーム調整
アーロンチェアのアームは、仕様により高さ、角度、前後位置などを調整できます。 デスクの高さや作業姿勢に合わせて、腕を支える位置を調整するための機能です。
6.座面高さ調整
ガス圧式のシート高さ調整機構を備えています。 床に対する足の位置やデスク高さに合わせて、着座位置を調整できます。
アーロンチェアはA・B・Cの3サイズ
アーロンチェアには、Aサイズ、Bサイズ、Cサイズの3種類があります。 単に座面の幅だけを変えているのではなく、背もたれの高さ、座面幅、チルト機構、ベースなどもサイズごとに設計されています。
Aサイズが最も小さく、Bサイズが中間、Cサイズが最も大きなサイズです。 体格に応じてサイズを選択することが、アーロンチェア選びの重要なポイントとなります。
クラシックとリマスタードの違い
1994年に発売された初代モデルは、現在「アーロンチェア クラシック」と呼ばれることがあります。 2016年に発表された再設計モデルが「アーロンチェア リマスタード」です。
両モデルは基本的な外観や設計思想を共有していますが、チルト機構、ペリクル、背中のサポート機構などには違いがあります。
クラシックでは従来型のペリクルやチルト機構が採用されていましたが、リマスタードでは8Zペリクル、Harmonic 2チルト、PostureFit SLなどが採用されています。
アーロンチェアのデザイナー

ビル・スタンフ
ビル・スタンフは、ハーマンミラーを代表するデザイナーのひとりです。 人間工学と座る人の身体の動きを重視した椅子の設計に取り組み、アーロンチェアではドン・チャドウィックと共同でデザインを担当しました。
ドン・チャドウィック
ドン・チャドウィックは、アメリカのインダストリアルデザイナーです。 ビル・スタンフとともに初代アーロンチェアを設計し、2016年のリマスタードでは再設計にも参加しました。
アーロンチェアの現在
アーロンチェアは1994年の発売から30年以上にわたり販売が続いているオフィスチェアです。 基本的なデザインを維持しながら、素材、人間工学、製造技術の進歩に合わせて改良が続けられてきました。
現在のアーロンチェアも、初代モデルで確立されたサスペンションシート、サイズ展開、身体の動きに追従するチルト機構といった基本的な考え方を継承しています。
まとめ
アーロンチェアは、1994年にハーマンミラーから発売されたオフィスチェアです。 ビル・スタンフとドン・チャドウィックによってデザインされ、ペリクルサスペンション、体格に合わせた3サイズ展開、身体の動きに追従するチルト機構などを特徴としています。
2016年にはリマスタードとして再設計され、8Zペリクル、PostureFit SL、Harmonic 2チルトなどが採用されました。 基本的なデザインを継承しながら、現在も改良を重ねながら販売されているオフィスチェアです。

監修:片上 太朗(ハーマンミラー認定スペシャリスト)

